個人と法人どちらが良い?法人成りする場合のメリットとデメリット

法人成りをするべきか?

事業を行うには、大きく分けて2つの方法があります。
ひとつは個人事業です。
初めは個人事業の形態から始める方が多いです。
そしてもうひとつは法人。
ちなみに。個人事業を法人にする事を法人化(法人成り)と言います。
この法人化を目標に仕事をされている人も多いでしょう。
個人事業を法人にするメリット、デメリットを考えてみました。
(注)ここでは一般的な株式会社や合同会社を想定しています。

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法人にするメリット

法人にするメリットとして次のようなものがあります。

  • 税金を計算する上で優遇される
  • 社会的信用度が増す
  • 社会保険(厚生年金)に加入できる
  • 決算を自由に設定できる

 

税金を計算する上で優遇される

個人事業の場合は所得税がかかることとなるのですが、所得税は、所得(もうけ)が多ければ多いほど税率も高くなります。
一方で法人税の場合は一定の税率となります。

ですから、所得が低い方は所得税の方が得ですが、所得が高い方は法人税の方が得することとなります。
法人税の方が得となる分岐点は、だいたい所得が500万円くらいです。

また、そのほかにも次の特典があります。

  • 社長の給与のうち一定部分に税金がかからない。(給与所得控除)
  • 親族に対する給与が届出をすることなく経費にできる。
  • 社長とその親族への退職金が経費になる。
  • 赤字を最長10年間、繰り越すことができる。(個人事業の場合は最長3年間)
  • 資本金を1,000万円未満にすると最長2年間消費税がかからない。(一定の場合は最長1年7ヶ月)
  • 家賃を経費とすることができる金額が個人事業よりも高くなる
  • 社長の出張の日当を経費とすることができる
  • 個人事業と比べて、経費とできる金額に柔軟性がある

このように、法人にすれば税金を計算する上で、多くの特典を受けられることとなります。あります。一般的には法人にした方が税金は安くなることが多いです。

 

社会的信用度が増す

個人事業より法人の方が対外的な信用度が大きくなります。
より大きな仕事を受注できたり、従業員を雇いやすくなります。

建設業の場合は、法人でないと仕事の受注ができないということがありますし、求職者の方がハローワークなどの求人を見た場合に、なんとなく法人の方が良いと思うことも多いでしょう。

ちなみに、一般的に選ばれる法人の形態は「株式会社」と「合同会社」があります。

社会的な信用度を重視する場合は、「株式会社」を選び、重視しない場合は「合同会社」を選ぶのが良いでしょう。

 

社長が厚生年金に加入できる

社長自身が厚生年金に加入することができます。
個人事業の場合は、社長が厚生保険に加入することはできません。

厚生年金は国民年金と比べて、保険料は高くなりますが、さまざまな保障が手厚くなります。
将来もらえる年金額が増えたり、社長に何かあった場合の遺族への補償が増えます。

 

決算を自由に設定できる

個人事業の場合は、会計期間が1月1日から12月31日までとなり、確定申告期限が3月15日です。
確定申告期限は変える事ができませんので、同時期に申告が殺到することとなります。
確定申告会場で長時間並んでウンザリしたという方も大勢いらっしゃるでしょう。

それに対して、法人の場合は会計期間と決算日を自由に設定できます。
例えば6月に仕事が暇になるようであれば、4月末を決算日にして、6月末を申告期限とすることができます。
(法人の場合の申告期限は、通常決算から2ヶ月以内となります。)

 

法人にするデメリット

法人にする場合はメリットだけでなくデメリットとして次のようなものがありますから、よく検討するべきです。

  • 税金を計算する上で不利となる部分もある
  • 確定申告書の作成が複雑になる
  • 社会保険に加入しなければならない
  • 設立費用や登記費用が必要

 

税金を計算する上で不利となる部分もある

法人は、税金を計算する上で個人事業と比べて不利となる部分もあります。
たとえば交際接待費は、個人事業の場合は経費にできる金額に上限はありませんが、法人の場合は経費にできる金額に上限があります。

また、個人事業の場合の青色申告の最大のメリットである65万円の特別控除が法人にはありません。
そのほかにも、個人事業の場合は赤字の場合は税金を支払う必要がありませんが、法人は赤字でも住民税の均等割(岐阜市の場合7万2千円)を支払う必要があります。

法人の場合は個人事業よりも、税務調査の確率が上がるというデメリットもあります。

 

税務申告書の作成が複雑になる

法人の税務申告書の作成は、個人事業と比べるとかなり複雑です。
個人事業の場合は市販の会計ソフトで申告書まで作成できますが、法人の申告書が作成できる市販のソフトはほとんどありません。

そのため、申告書の作成は税理士へ依頼する方が多いです。
また、一般的に税理士へ支払う費用も法人の方が高くなります。

 

社会保険に加入しなければならない

役員は原則、社会保険に加入しなければなりません。
社会保険料の負担は、個人負担と会社負担それぞれ給与の約15%ですが、社長の場合、会社負担分も実質個人負担分と同じと考えられますから、両方を合わせると約30%負担となります。

社会保険の加入はメリットもありますが、金銭的な負担という点ではデメリットでもあります。
また、個人事業の場合では社会保険に加入しなくても良かった従業員も、法人になったら加入しなければならなくなったということもありえます。

ただ、従業員の場合は、社会保険の方が保険料が安くなる場合が多いです。

 

設立費用や登記費用が必要

法人は設立時はもちろん、解散時にも登記費用が発生します。
また、株式会社の場合、最低でも10年に1回は役員変更登記をしなければなりません。

役員変更登記と聞くと、「役員の変更がある場合にしなければならない」と思われがちですが、役員の変更がない場合でも必要となります。

 

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なぜ法人にしたいかが大切

ひと昔であれば「節税のために法人成りする」というパターンが大半でした。
しかし、近年は法人の社会保険の加入厳格化もあり、「税金+社会保険」で考えると法人の方が負担が大きくなることも少なくありません。

節税目的で法人にしたとしても、逆に社会保険料の負担が大幅に増えてしまって、資金繰りが悪くなることもあります。
ですから、法人成りしたらどうなるかを事前にシミュレーションすることをおすすめします。

節税よりも、
「事業をもっと拡大したい」
「従業員を雇って福利厚生を充実させたい」
「対外的信用を向上させたい」
といった目的をもって法人成りすることが大切です。

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