2020年12月10日に、令和3年度の税制改正大綱が発表されました。
新型コロナウイルスの影響を受けている方々が多いなかどのような改正があるのか?
その中でも、フリーランスや中小企業に影響ありそうな内容をまとめました。
今回は、法人課税編となります。
あくまでも現時点で判明している内容の速報版となります。
実際の取り扱いが異なる場合もございますのでご注意ください。
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法人課税
デジタルトランスフォーメーション投資促進税制の創設
青色申告書を提出する法人で、事業適応計画(仮称)の認定を受けたものが、一定の要件を満たすソフトウェアの新設や増設、その事業計画に必要なソフトウェアにかかる費用(繰延資産となるものに限る)の支出をした場合には、次の措置を受けることができます。
- 取得等をして国内にある事業の用に供した事業適応設備(事業適応計画の認定をうけたソフトウェア等)の取得価額の30%の特別償却と、その取得価額の3%(グループ外の事業者とデータ連携する場合は5%)の税額控除の選択適用ができます。
- 上記の繰延資産の額の30%の特別償却と、その取得価額の3%(グループ外の事業者とデータ連携する場合は5%)の税額控除の選択適用ができます。
※ただし、税額控除における控除税額は、後述のカーボンニュートラルに向けた投資促進税制の税額控除制度による控除税額との合計で、当期の法人税額の20%が上限となります。
この改正は、産業競争力強化法の改正法の施行の日から令和5年3月31日までの間のソフトウェア等の取得に適用されます。
取得したものがソフトウェアであれば①の適用となり、繰延資産であれば②の適用となります。
現時点では事業適応計画がどのようなものかはわかりませんが、
認定を受ける→実際に設備を取得する→申告する
という、最近の制度によくある流れのようです。
カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設
青色申告書を提出する法人で、中長期環境適応計画(仮称)の認定を受けたものが、その中長期環境適応計画に記載された産業競争力強化法の中長期環境適応生産設備(仮称)または中長期環境適応需要開拓製品生産設備(仮称)の取得等をして、事業の用に供した場合に、
- 取得した設備の取得価額の50%の特別償却
- 取得した設備の取得価額の5%(温室効果ガスの削減に資するものにあたっては10%)の税額控除
のいずれかの適用を受けることができます。
※ただし、税額控除における控除税額は、前述のデジタルトランスフォーメーション投資促進税制の税額控除制度による控除税額との合計で、当期の法人税額の20%が上限となります。
この改正は、産業競争力強化法の改正法の施行の日から令和6年3月31日までの間の設備の取得に適用されます。
この制度も現時点では中長期環境適応計画がどのようなものかはわかりませんが、事前に認定を受ける必要があるという点では、デジタルトランスフォーメーション投資促進税制と同じです。
研究開発税制の見直し
- 試験研究費の総額に係る税額控除が次のように見直されます。
①税額控除率を次の通り見直し、下限を2%に引き下げたうえ、上限を14%とする特例の適用期限が2年延長されます。
・増減試験研究費割合が9.4%超
→ 10.145%+(増減試験研究費割合-9.4%)×0.35
・増減試験研究費割合が9.4%以下
→ 10.145%-(9.4%-増減試験研究費割合)×0.175②令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する事業年度で、
・基準年度比売上金額減少割合が2%以上
・試験研究費の額が基準年度試験研究費の額を超える
の要件を満たせば、控除税額の上限に当期の法人税額の5%が上乗せされます。③「試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合における税額控除率の特例及び控除税額の上限の上乗せ特例」の適用期限が2年延長されます。
- 中小企業技術基盤強化税制が次のように見直されます。
①令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する事業年度で、
・基準年度比売上金額減少割合が2%以上
・試験研究費の額が基準年度試験研究費の額を超える
の要件を満たせば、控除税額の上限に当期の法人税額の5%が上乗せされます。②「増減試験研究費割合が8%を超える場合の特例」を「増減試験研究費割合が9.4%を超える場合に次のようにする特例」に見直した上、適用期限が2年延長されます。
・税額控除率(12%)に増減試験研究費割合から9.4%を控除した割合に0.35を乗じて計算した割合が加算されます。
・控除税額の上限に、当期の法人税額の10%が上乗せされます。③試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合における税額控除率の特例及び試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合における控除税額の上限の上乗せ特例」の適用期限が2年延長されます。
- 特別試験研究費の額に係る税額控除制度について一定の見直しが行われます。
研究開発税制については毎年見直しが行われていますので、申告の際は注意が必要です。
中小企業向け投資促進税制等の見直し
- 中小事業者等の法人税の軽減税率の特例の適用期限が2年間延長されます。
- 中小企業投資促進税制について、対象となる指定事業に「不動産業」「物品賃貸業」「料亭、バー等」が追加される等の見直しがおこなわれたうえ適用期限が2年間延長されます。
- 特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却・税額控除制度は、適用期限の到来をもって廃止されます。
- 中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却・税額控除について、一定の見直しがおこなわれたうえ適用期限が2年間延長されます。
投資促進税制の対象となる指定事業が追加されました。
上記の事業を営まれている方は、適用を忘れないようにしましょう。
所得拡大促進税制の見直し
中小企業における所得拡大促進税制について、次の見直しがおこなわれたうえ適用期間が2年間延長されます。
- 「継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が1.5%である」という要件が
→「雇用者給与等支給額の比較雇用者給与等支給額に対する増加割合が1.5%である」という要件に見直されます。 - 税額控除率が25%となる要件のうち、「継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が2.5%である」という要件が
→「雇用者給与等支給額の比較雇用者給与等支給額に対する増加割合が2.5%である」という要件に見直されます。 - 給与等の支給額から控除する「給与等に充てるため他の者から支払いを受ける金額」の範囲が明確化され、次の見直しが行われます。
①上記の適用要件の判定をする場合には「雇用調整助成金等」の額を控除しないこととされます。②税額控除率を乗ずる基礎となる「雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額」は、雇用調整助成金等の額を控除して計算した金額が上限とされます。
中小企業の経営資源の集約化に資する税制の創設
青色申告書を提出する中小企業者で、経営力向上計画(経営資源集約化措置(仮称)が記載されたものに限る)の認定を受けたものが、その経営力向上計画に従って、他の法人の株式等の取得等(取得価額が10億円を超える場合を除く)をし、その取得の日を含む事業年度終了の日まで引き続き有している場合に、その株式等の取得価額の70%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、その積立金額の損金算入が認められます。
この準備金は、その株式の全部または一部を有しなくなった場合等は取り崩す必要があり、積立年度の翌年度から5年間で均等額を取り崩して益金に算入する必要があります。
この改正は、中小企業等経営強化法の改正法の施行の日から令和6年3月31日までの間の株式等の取得に適用されます。
投資額の一定額に対応する税額が繰り延べられることとなります。
今後、中小企業のM&Aが更に進むように思います。
まとめ
法人課税に対する今回の改正で、特に中小企業に影響が大きいのは、「所得拡大促進税制の見直し」でしょう。
要件がかなり緩和されましたので、改正後は適用漏れが無いかを十分に注意する必要があります。
それ以外は、デジタルトランスフォーメーション投資促進税制も個人的に気になります。
ただし事前に認定を受ける必要がありますので、適用を受けるためには早めに計画をたてることが重要になりそうです。
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